古文書講座「上級コース」の古文書『絵本宝能縷』ご紹介

古文書講座「上級コース」の古文書『絵本宝能縷』ご紹介

今回は「上級コース」のテキスト、
『絵本宝能縷(えほんたからのいとすじ)』をご紹介します。

手元にあるのは複製で、オリジナル本が天明6年(1786)の刊行なのですが、
女性たちがカイコを育て、最終的にそれが絹織物となるまでの工程を
大変美しい絵柄とともに書き現した、
「養蚕」の原始の様子を紹介したものです。

その絵柄を担当したのは、勝川春章・北尾重政といった
江戸中期を代表する2名の浮世絵師のため、
文書よりも絵を見て楽しむところに主眼が置かれているのが
大きな特徴になります。

現代で養蚕のことを知る人は少ないのではないかと思いますが、
日本の軽工業といえば繊維工業、それは養蚕から始まりましたので、
元来の手作業で行っている様子をもっとも簡単に知ることのできるのが
この古文書ではないかと思います。

簡単と言いましたが、ページ数が少なく全12ページ、
文章量も少ないというだけで、実のところ用語はたいへん難解。
養蚕の専門用語がてんこ盛りなのです。

それでも、美しい絵を参考にしながら推測していくのは
ほかの古文書にはない楽しさがあり、
織物の完成イコール読了となりますから、
解読していく過程がハッキリわかるという
単純明快なのがこの本のいいところ。

ぜひどなたでもいにしえの日本の良さを感じていただきたい一冊です。
上級コースの中くらいですが、箸休め程度の感覚で
気負いなく臨まれると楽しめるかなと思います。

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