古文書講座「上級コース」の古文書『前訓』ご紹介
今回は「上級コース」のテキスト、
『前訓』をご紹介します。
冒頭に
「男子は7歳から15歳まで、女子は7歳から12歳までの方を
対象にした教育講義をしますので、お子さま方はお行儀良くしてください。
ためになるお話しですから、どなた様でもご希望される方は
ご遠慮なくお越しください」
とありますから、現代でいうところの講演録のようなものです。
子ども向けとは言いつつも、大人でもOKのこの講義は、
「こんなことをしたら悪い人間になりますよ、
こんな人間になるのが理想ですよ」
といった内容に徹していて、
子どもからすると道徳のお話、大人からは教育論になります。
しかも教えには男子の部と女子の部に分かれているのも時代を感じるところ。
さらに講義会場はこの挿絵のように、男子席と女子席に分かれ、
さながらイスラムのモスクの様相です。
女子への教えは『女今川』に代表される往来物すべてに共通する
「舅姑に仕え、夫に従い、両親を敬いなさい」
の類と同じで、このような趣旨の教えがさらに詳しく述べられています。
一方、男子の教育はというと、
こちらは女子にもあてはまる人間論のような教えばかりなのです。
現代との時代差をハッキリ感じられる江戸時代の教育。
『前訓』は教育書としては随一の古文書で、
この一冊で効率よく十分な量の知識を得られます。
くずし字も変体仮名もこれ以上ないほど整った教科書のような字体ですが、
漢字の数が多いのと道徳的内容から、上級コースのテキストとしました。
難易度ランクは上級の下にあたりますので、
少し古文書を読めるようになれば、
どなたでも教育についての大きな学びとなるでしょう。