古文書講座「上級コース」の古文書『おかけまうでの日記』ご紹介
今回は「上級コース」のテキスト、
『おかけまうでの日記(おかげもうでの日記)』をご紹介します。
江戸時代に大ブームとなった伊勢詣に関する随筆で、
同じ三重県内の松阪に住んでいる稲掛茂穂(のちに本居宣長の養子となる本居大平)が
16歳だったころに書いたものです。
伊勢神宮参拝に全国各地からやってくる参詣者の様子を、
信仰心の篤い著者が細やかな目線でつづった
16歳とはとても思えない、大変丁寧で老成した文章が特徴です。
古文書の書体もその内容に合わせたかのような
丸文字の可愛らしい個性的な文字なので、
一見解読するのが非常に簡単そうに見えるのですが、
実はくずし字よりも古語の判別がたいへんやっかいな、
上級コースの中でも上、最難関部類に入ります。
神仏や宗教に関する古文書というのは非常に多く
ほとんどが道徳的な教えに徹したものに占められるなか、
こうした今風のエッセイのようなものは
とても珍しいのではないかと思います。
そのため、古語に振り回されてしまうことを差し引いても、
日本人の今も昔も変わらない伊勢信仰の実態をよく知ることのできる、
強くおススメしたい古文書です。